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福岡地方裁判所 昭和56年(行ク)5号 決定 1982年2月01日

申立人

福岡県地方労働委員会

右代表者会長

副島次郎

右指定代理人

岩崎光次

ほか五名

被申立人

あけぼのタクシー有限会社

右代表者

瓜生哲也

右代理人

苑田美毅

山口定男

立川康彦

主文

本件申立を却下する。

理由

一本件申立の趣旨及び理由は、別紙緊急命令申立書記載のとおりである。

二本件申立の対象となつている救済命令(以下「本件救済命令」という。)の要旨は、被申立人は、昭和五四年三月二八日被申立人従業員であつた坂本常雄を、同人がそれまで数回の出勤停止の懲戒を受けているにもかかわらず、配車係の無線呼出しに応答するようにとの上司の説得に従わず、反省の態度がないことを理由として懲戒解雇したが、申立人は、右解雇は労働組合法七条一号の不利益取扱に該当する不当労働行為であると判断して、被申立人に対し、坂本の原職復帰及びバックペイを命じたものである。

三ところで、緊急命令の申立があつた場合、受訴裁判所は、当該救済命令の適否及びその必要性を審査したうえ、相当と認められる場合に緊急命令を発すべきものと解せられるので、以下の点につき検討する。

1  前記坂本常雄は、本件懲戒解雇が不当労働行為、懲戒権の濫用に該当し無効であると主張して、本件被申立人を相手方として福岡地方裁判所に対し雇用契約上の地位確認等を求める訴を提起し(当庁昭和五四年(ワ)第七四一号)、同訴訟は、同じく坂本が被申立人を相手方として提訴した別件懲戒処分無効確認等請求事件(当庁昭和五三年(ワ)第一五七一号)と併合審理されたうえ、本件懲戒解雇の効力に関し昭和五六年一〇月七日同裁判所は、「坂本は、配車係の無線呼出に応ぜず、これを理由に昭和五四年二月二八日出勤停止一か月の懲戒を受けたが、同期間が満了した同年三月二八日出社した際、上司から配車係の無線指示に従うよう説諭されたにもかかわらず、これに応じようとしなかつた。右はタクシー会社従業員として重大な業務上の指示命令違反であり、企業の秩序を紊し、企業目的遂行に害を及ぼす行為であるから、本件懲戒解雇を懲戒権の濫用ということはできず、また、右解雇が組合員であることや組合活動を嫌悪してなされた不当労働行為と認めることもできない」旨判示して、坂本の雇用契約上の地位確認等を求める請求を棄却する判決を言渡したことは、当裁判所に明らかである。

判旨2 右判決に照らして考えると、本件救済命令の適法性については一応疑問の余地があると解せられるところ、右判決にもかかわらずなお本件救済命令の認定、判断を相当とするに足りる疎明はない。したがつて、現時点においては、本件救済命令の維持可能性に疑義があり、緊急命令を発することは相当でない。

四よつて、本件申立を却下することとし、主文のとおり決定する。

(辻忠雄 湯地紘一郎 林田宗一)

緊急命令申立書<省略>

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